化学合成オイルのメリット&デメリットを知る

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化学合成オイルのメリット&デメリットを知る

化学合成オイルは高性能の代名詞?

レースや雑誌によく取り上げられている化学合成オイルは、
「高性能の代名詞」とされています。

しかし、本当に化学合成オイルは高性能なのでしょうか?
メリットの他にデメリットはないの?と疑問をお持ちになりますよね。

エンジンオイルの性能は「ベースオイル」で決まります。
…と言いたいところですが、実は少しだけ違います。

ベースオイルの性能も大事ですが、それだけではありません。
配合する「添加剤」との組み合わせと「作り方」で決まります。
そこに「お客様が求める性能がマッチするか・しないか」なのです。

実は化学合成オイルはメリットが少ない

化学合成にはグループ3(VHVI)・グループ4(PAO)・グループ5(エステル)があります

グループ3(VHVI)について解説

グループ3(VHVI)の製造過程を知ると グループ3(VHVI)の潤滑性の違いが理解できます

グループ1をつくる

原油を精製するとグループ1を作る原料が取れます この原料を水素を使い精製すると グループ1が出来ます

このグループ1は分子の大きさがバラバラで 不純物が多く含まれています 大きすぎる分子は壊れやすく 壊れると粘りを失いやすくなります 

小さすぎる分子は熱により蒸発して無くなります

このことが鉱物オイルは品質が悪いと言われる原因です

製造が簡単で製造コストもかかりません

グループ2をつくる

完成したグループ1を水素を使い更に精製します この時グループ1で問題であった 分子が大きすぎるものや小さすぎるものを取り除き 分子を均一化します

この均一化がちょうどよい大きさの分子になっています

手間が増えた分製造コストがかかってきます 需要が少ない為に製造コストは高くなっています

グループ3をつくる

完成したグループ2を一旦分子をバラバラに分化し 再結合させたもの

分子は小さくなってサラサラなオイルが完成します 

このサラサラが現代のエコカーに使われる0Wや5Wが作れるようになっています

手間がかかり製造コストがかかっていますが 需要と供給の関係で需要が多くなると製造コストが非常に安くなっています

グループ3(VHVI)の潤滑性はグループ1とさほど変わらない

結論は同じ原油から精製されている事から潤滑性は変わらないこと 不純物と分子の大きさが違うだけ だから部分合成ではグループ3(VHVI)とグループ1を混ぜて部分合成として販売されている

化学合成は熱に強いは誤認

正確には分子が小さくなることで 
・せん断に強くなる
・高温に対して分子が安定する

ことにあります

結果 簡単にいうと熱に強いという事ですが ここで誤認が起きます

熱に強いというと130℃でも大丈夫と思い込んでしまっていることです

ベースオイル自体は非常に耐久性がある

化学合成オイルの耐久性は一説によると60,000㎞
鉱物オイルの耐久性は30,000㎞と言われています

それなのに5,000㎞や10,000㎞でオイル交換しなければならないのはなぜでしょうか? それは配合される添加剤が原因です

熱に弱く、せん断に弱い添加剤

高い流動性は増粘剤(ポリマー)によって作られる

化学合成オイルは 上記に記載した高い流動性を持つため「ポリマー」を添加して粘りを作り上げるのが一般的です。

ポリマーとは「粘度指数向上剤」といいます つまり 粘りを増やすための「増粘剤

料理をするとき 水に片栗粉を入れて加熱すると ドロドロになりますよね
それと同じでエンジンオイルをドロドロにさせるための添加剤です

このポリマーを使って、0W-20,5W-30,5W-40,10W-50の粘度を強制的に引っぱり上げているわけです。

既にお伝えした通り、化学合成オイルは流動性が高いのがメリットです。
この流動性の高さには、ポリマーが寄与しています。

なぜなら ポリマーは熱が加えられると 油温が適温になる際に粘りが落ちて流動性が高くなる設計だからです
化学合成オイル本来のメリットを最大限に発揮できる作り方ではないかと思います。

余談ですが、市販の添加剤であるオイル漏れ防止剤・白煙防止剤などは、このポリマーを使っています。
10W-30に漏れ防止剤であるポリマーを入れることで、10W-40にしているだけ。
サラサラなオイルよりも粘りのあるオイルの方が漏れにくくなるからです。

エステルは加水分解する

加水分解という作用により合成潤滑油などが使用不可能になることがあるようです。このような有機物の加水分解について,具体的な事例をあげて説明して下さい。 解説します。 水の作用による化合物の分解反応の起こりにくさを示す尺度として加水分解安定性があります。一般に,加水分解安定性が悪いと分解反応物が油に不溶となって分離したり,腐食性を示す場合があります。 通常,鉱油系は安定で,水の作用により分解生成物を発生することはありませんが,エステル系合成潤滑油や金属石ケン系やエステル潤滑油添加剤のなかには,水が入ると不安定になるものがあります。 この具体例を2,3説明してみましょう。

参照元:ジュンツウネット21 潤滑油業界団体向け情報サイト

エステルは加水分解して潤滑性を失います 
ガソリンが燃焼すると 水が出来ます 冬場にマフラーから湯気がでているのを見たことがある人は多いはず これはガソリンが炭化水素(HC)でできているからです 吸気中の酸素(O)と結びつくと H2O(水)が必ずできます 

マフラーやエンジンの中には蒸気が入り込んでいますから エンジン内部やマフラー内部に結露ができて水がオイルに入り込みます この時にエステルは加水分解しやすいことになり 長期間の使用には耐えないことがよくわかります

鉱物オイルは加水分解しにくいのが特徴です

PAO単体で使われることは少ない

通常PAO 100%の製品は見当たりません 昔あったようですが いつの間にか販売が終了している模様 

PAOはエステルと混ぜて使われるのが普通ですが エンジンオイルという製品になると非常に高価になります

潤滑性はベースオイルだけで決まるわけではない

化学合成オイルは潤滑性が高いとおもっているあなた もし化学合成の潤滑性が高いのであれば どんなに安い化学合成オイルでも潤滑性は高いはず 潤滑性が高いということは摩耗抑制・摩擦低減ができて燃費も良いし エンジンにも優しいはずです

近年鉱物オイルよりも化学合成(VHVI)が主流なのはご存じの方も多いはずですが 実情はどうでしょうか? エンジンに優しいですか? 燃費は良くなってますか? エンジンは静かになりましたか?

多くの方はNOと言うはずです

それはベースオイルだけでなく 配合する添加剤の質によるところが大きいからです

エンジンオイルの製造方法でことなる性能の違い

同じベースオイルを使っていても性能は大きく変わることになります
その製法は2つ

通常の製法ノンポリマー製法

通常製法

通常1種類のベースオイルに様々な添加剤を配合して作ります

例えるならば 料理に長期間保存するための保存料・色味を良くして美味しく見せかけるための発色剤や着色料・人口甘味料など添加物をいれた料理

ノンポリマー製法

ノンポリマー製法とは2種類のベースオイルをつかった製法

例えるならば 食材本来の味や食感を引き出した高級料理

2種類のベースオイルを贅沢に使っているために生産コストは高くなります

通常製法とノンポリマー製法の違い

ノンポリマー鉱物オイルは劣化に強い

化学合成オイルを超える性能を持つ鉱物オイル

化学合成オイルとノンポリマー鉱物オイルの性能比較で証明

ISOTテストとは165.5℃の高温で24時間加熱したあとの状態を比較したもの

ライズオイル(ノンポリマー鉱物オイル)20W-50

粘度の変化量
試験前16.84 
試験後16.43
0.41ダウン
(ダウン量が少ない程耐久性が高いことを証明)
酸値
試験前1.82
試験後1.77
0.05ダウン

A社通常製法15W-50

粘度の変化量
試験前19.34 
試験後15.47
3.87ダウン
(ダウン量が少ない程耐久性が高いことを証明)
酸値
試験前2.56
試験後2.17
0.39ダウン

圧倒的にノンポリマーが耐久性に優れることを証明

世界ラリーで性能を証明

APRC2アジアパシフィックラリー選手権2018年 クラス優勝

どのオイル(粘度)を使ったらいいのか気になったら

元エンジンチューナーでエンジンオイルのプロがお客様お一人お一人の愛車に最適な粘度の選定をサポートさせていただいております

あなたの求めるものは何ですか?エンジン保護?旧車用のオイル?燃費?白煙?目的にあったオイル選びをしましょう

ご注意
整備に関するお問合せはご遠慮ください
整備は現車を確認しないと問題個所を特定するのは困難です

他社メーカーのお問合せにはお答えできません
当社は回答する立場にございませんのであらかじめご了承ねがいます

ノンポリマー製法についてもっと詳

鉱物オイルは旧車・過走行車にとってメリットだらけ

それでは、「旧車・過走行車(10万キロを超えたエンジン)に乗っている自分は、どうしたら良いのか」と思われる方もいるかもしれません。そんな方々におすすめなのが、鉱物オイル

ここでは簡単に、「なぜ鉱物オイルが旧車・過走行車におすすめなのか」説明します。

ロータリーエンジンに最適なエンジンオイルの一覧はこちら >>

番外編:部分合成オイルについて

本記事には取り上げていませんが、「部分合成オイル」というオイルもあります。
ご存知の方は、「部分合成オイルは化学合成オイルのメリットと鉱物オイルのメリットの良いとこどり…」と思っている方もいるのではないでしょうか。

実は違います。

部分合成オイルの名称を読み解いてみましょう。
英語では、シンセティックブレンド(SYNTHETIC BLEND)と言います。
部分的に合成を混ぜているという意味。

量販店に並んでいる多くの部分合成オイルは何を使っているのでしょうか?
グループ1・3を混ぜて使っています。これが部分合成オイルです。
簡単にいうと、鉱物80%化学合成20%かもしれない…?
メーカーにより配合比率は違うと思いますが、言葉だけみると合成の比率は少なく、鉱物の比率が多い気がします。
部分鉱物オイルでは無いのですよね。
それも使っているのはグループ1です。配合比率は極秘なのです。

私が部分合成を作るのであれば、グループ2・3を使います。
ただ、グループ2・3もほぼ同じ性能なので、ブレンドする意味があまり無い気がします。
意味があるとすれば、鉱物は10Wまでしか出来ないものをグループ2・3を混ぜることで0W、5Wに出来るぐらいでしょうか。