化学合成オイルと鉱物オイルのメリット&デメリットを知る

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化学合成オイルのメリット&デメリットを知る

化学合成オイルは高性能の代名詞?

化学合成オイルは 自動車レースや専門雑誌で頻繁に取り上げられ、「高性能の代名詞」として認知されています
しかし その高性能性について疑問を持つ人は多いですね

本当に化学合成オイルは高性能なのでしょうか?
また メリットだけでなくデメリットは存在するのでしょうか?

ネットに公開されている情報に疑問を持ち 本質を知ることは非常に重要です

エンジンオイルの性能は 一般的にはベースオイルの品質に依存していると考えられがちです

ベースオイルの品質はもちろん重要ですが それだけでなく添加剤の種類や配合方法 そして製造工程なども重要な要素です
つまり化学合成オイルの性能は単にベースオイルの性能だけをフォーカスするだけでなく それに加えられる添加剤や製造プロセスにも注目すべきです

さらに重要なのは お客様のニーズに合った性能を提供できるかどうかです

どんなに高性能なオイルであっても お客様の要求にマッチしなければ意味がありません お客様の使い方・環境・エンジンの状態によって求められる性能は異なります

そのため化学合成オイルだから安心と単純に選ぶだけでなく 個々の状況や要求に合わせて行う必要だと私個人は感じています

つまり化学合成オイルが高性能であることは間違いありませんが その性能を最大限に引き出すためには様々な要素が組み合わさっていることを理解する必要があります

そして最終的にはお客様のニーズに合ったオイルを選択することが重要です

実は化学合成オイルはメリットが少ない

化学合成にはグループ3(VHVI)・グループ4(PAO)・グループ5(エステル)があります

グループ3(VHVI)について解説

製造過程を知ると グループ3(VHVI)の潤滑性の違いが理解できます

グループ1をつくる

原油を精製するとグループ1を作る原料が取れます この原料を水素を使い精製すると グループ1が出来ます ガソリンエンジンが出来た時代から使われている製法で 精製が単純です

そのため分子の大きすぎや小さすぎ 不純物が多いことが欠点です

グループ1の特徴

  • 大きすぎる分子 
    大きすぎる分子は壊れやすい(せん断)
    例えばSEA40であっても すぐにSEA30に粘度が落ちてしい製品の性能が保てない
  • 小さすぎる分子
    オイルが減るという現象がでる

このことが鉱物オイルは品質が悪いと言われる原因です

製造が簡単で製造コストもかかりません

せん断とは

正確には分子が切られること

分子が大きすぎるとせん断されやすくなるため 粘度を保つことが出来なくなります 

グループ2をつくる

グループ2の特徴

完成したグループ1を水素を使い更に精製します 

この時グループ1で問題であった 分子が大きすぎるものや小さすぎるものを取り除き 分子を均一化します

この均一化がちょうどよい大きさの分子になっています

手間が増えた分製造コストがかかってきます 需要が少ない為に製造コストは高くなっています

グループ3をつくる

グループ3の特徴

完成したグループ2を一旦分子をバラバラに分化し再結合させたもの

分子は更に小さくなってサラサラなオイルが完成します 

このサラサラが現代のエコカーに使われる0Wや5Wが作れるようになっています

手間がかかり製造コストがかかっていますが 需要と供給の関係で需要が多くなると製造コストが非常に安くなっています

グループ3(VHVI)の潤滑性はグループ1とさほど変わらない

結論は同じ原油から精製されている事から潤滑性は変わらないこと 不純物と分子の大きさが違うだけ だから部分合成ではグループ3(VHVI)とグループ1を混ぜて部分合成として販売されている

化学合成は熱に強いは誤認

正確には分子が小さくなることで 
・せん断に強くなる
・高温に対して分子が安定する

ことにあります

結果 簡単にいうと熱に強いという事ですが ここで誤認が起きます

熱に強いというと130℃でも大丈夫と思い込んでしまっていることです

ベースオイル自体は非常に耐久性がある

化学合成オイル(VHVI・エステル・PAO)の耐久性は一説によると60,000㎞以上と言われています
鉱物オイルの耐久性は30,000㎞と言われています

高耐久の化学合成はなぜ5,000㎞や10,000㎞で交換する?

高耐久の化学合成オイルは高耐久のはず なぜ5,000㎞や10,000㎞でオイル交換しなければならないのはなぜでしょうか? 

その理由は配合される添加剤が先に悪くなるのが原因です

添加剤は熱に弱く、せん断に弱い

つまりどんなに高性能なベースオイルを使っても 先に添加剤が壊れてしまうからです なので新興国では廃油を無料で回収し 

遠心分離機にかけて汚れを分離させベースオイルを取り出してリサイクルオイルを安価で製造しています

これはベースオイルが劣化しにくいことを利用しているから出来る事 しかし劣化したベースオイルも混ざっていることから 品質自体はよくありません

増粘剤(ポリマー)はとても劣化しやすい

化学合成オイルは 上記に記載した高い流動性を持つため「ポリマー」を添加して粘りを作り上げるのが一般的です。

ポリマーとは「粘度指数向上剤」といいます つまり 粘りを増やすための「増粘剤

料理をするとき 水に片栗粉を入れて加熱すると ドロドロになりますよね
それと同じでエンジンオイルをドロドロにさせるための添加剤です

このポリマーを使って、0W-20,5W-30,5W-40,10W-50の粘度を強制的に引っぱり上げているわけです。

粘度をつくるときポリマーが関与しています。

ポリマーは熱が加えられると 油温が適温になる際に粘りが落ちて流動性が高くなる設計です 

ご家庭でつくるカレーも冷えたときはドロッとしていますが 加熱するとサラサラになりますよね?

化学合成オイル本来のメリットを最大限に発揮できる作り方ではないかと思います

ポリマーが劣化するとオイルは黒くなる つまりオイルが黒くなる原因はポリマーにあることになります

余談ですが、市販の添加剤であるオイル漏れ防止剤・白煙防止剤などは、このポリマーを使っています。
10W-30に漏れ防止剤であるポリマーを入れることで、10W-40にしているだけ。
サラサラなオイルよりも粘りのあるオイルの方が漏れにくくなるからです。

エステルは加水分解する

加水分解という作用により合成潤滑油などが使用不可能になることがあるようです。このような有機物の加水分解について,具体的な事例をあげて説明して下さい。 解説します。 水の作用による化合物の分解反応の起こりにくさを示す尺度として加水分解安定性があります。一般に,加水分解安定性が悪いと分解反応物が油に不溶となって分離したり,腐食性を示す場合があります。 通常,鉱油系は安定で,水の作用により分解生成物を発生することはありませんが,エステル系合成潤滑油や金属石ケン系やエステル潤滑油添加剤のなかには,水が入ると不安定になるものがあります。 この具体例を2,3説明してみましょう。

参照元:ジュンツウネット21 潤滑油業界団体向け情報サイト

エステルは加水分解して潤滑性を失います 
ガソリンが燃焼すると 水が出来ます 冬場にマフラーから湯気がでているのを見たことがある人は多いはず これはガソリン燃えると水ができるからです

ガソリンは炭化水素(HC)で出来ています 空気中の酸素(O)と結びつきH2O(水)が必ずできます

マフラーやエンジンの中には蒸気が入り込んでいますから エンジン内部やマフラー内部に結露ができて水がオイルに入り込みます この時にエステルは加水分解しやすいことになり 長期間の使用には耐えないことがよくわかります

鉱物オイルは加水分解しにくいのが特徴です

PAO単体で使われることは少ない

通常PAO 100%の製品もあるようですね 昔は無かったんですけど シンガポールで安価に生産されている模様

潤滑性はベースオイルだけで決まるわけではない

化学合成オイルは潤滑性が高いと思っていっるあなた もし化学合成の潤滑性が高いのであれば どんなに安い化学合成オイルでも潤滑性は高いはず 潤滑性が高いということは摩耗抑制・摩擦低減ができて燃費も良いし エンジンにも優しいはずです

エンジンも10万㎞で悪くなって価値も落ちますが化学合成全盛になった今 エンジンの寿命は延びていますか? 私個人の意見としては昔と変わらないもしくはむしろ悪くなっている気がします

その理由は完全に耐久性を考えずに作られたエンジン エコに特化したエンジンにあると見ています 

このエンジンに合わせたものが今の化学合成オイルです

化学合成ベースオイルだと過信はよくありません 配合する添加剤の質によるところが大きいからです

エンジンオイルの製造方法でことなる性能の違い

同じベースオイルを使っていても性能は大きく変わることになります
その製法は2つ

通常の製法ノンポリマー製法

通常製法

通常1種類のベースオイルに様々な添加剤を配合して作ります

例えるならば 料理に長期間保存するための保存料・色味を良くして美味しく見せかけるための発色剤や着色料・人口甘味料など添加物をいれた料理

ノンポリマー製法

ノンポリマー製法とは2種類のベースオイルをつかった製法

例えるならば 食材本来の味や食感を引き出した料理

2種類のベースオイルを贅沢に使っているために生産コストは高くなります

通常製法とノンポリマー製法の違い

ノンポリマー鉱物オイルは劣化に強い

化学合成オイルを超える性能を持つ鉱物オイル

化学合成オイルとノンポリマー鉱物オイルの性能比較で証明

ISOTテストとは165.5℃の高温で24時間加熱したあとの品質を比較したもの

ライズオイル(ノンポリマー鉱物オイル)20W-50

粘度の変化量
試験前16.84 
試験後16.43
0.41ダウン
(ダウン量が少ない程耐久性が高いことを証明)
酸値
試験前1.82
試験後1.77
0.05ダウン

A社通常製法15W-50

粘度の変化量
試験前19.34 
試験後15.47
3.87ダウン
(ダウン量が少ない程耐久性が高いことを証明)
酸値
試験前2.56
試験後2.17
0.39ダウン

圧倒的にノンポリマーが耐久性に優れることを証明

世界ラリーで性能を証明

APRC2アジアパシフィックラリー選手権2018年 クラス優勝

どのオイル(粘度)を使ったらいいのか気になったら

元エンジンチューナーでエンジンオイルのプロがお客様お一人お一人の愛車に最適な粘度の選定をサポートさせていただいております

あなたの求めるものは何ですか?エンジン保護?旧車用のオイル?燃費?白煙?目的にあったオイル選びをしましょう

ご注意
整備に関するお問合せはご遠慮ください
整備は現車を確認しないと問題個所を特定するのは困難です

他社メーカーのお問合せにはお答えできません
当社は回答する立場にございませんのであらかじめご了承ねがいます

ノンポリマー製法についてもっと詳

鉱物オイルは旧車・過走行車にとってメリットだらけ

それでは、「旧車・過走行車(10万キロを超えたエンジン)に乗っている自分は、どうしたら良いのか」と思われる方もいるかもしれません。そんな方々におすすめなのが、鉱物オイル

ここでは簡単に、「なぜ鉱物オイルが旧車・過走行車におすすめなのか」説明します。

ロータリーエンジンに最適なエンジンオイルの一覧はこちら >>

番外編:部分合成オイルについて

本記事には取り上げていませんが、「部分合成オイル」というオイルもあります。
ご存知の方は、「部分合成オイルは化学合成オイルのメリットと鉱物オイルのメリットの良いとこどり…」と思っている方もいるのではないでしょうか。

実は違います。

部分合成オイルの名称を読み解いてみましょう。
英語では、シンセティックブレンド(SYNTHETIC BLEND)と言います。
部分的に合成を混ぜているという意味。

量販店に並んでいる多くの部分合成オイルは何を使っているのでしょうか?
グループ1・3を混ぜて使っています。これが部分合成オイルです。
簡単にいうと、鉱物80%化学合成20%かもしれない…?
メーカーにより配合比率は違うと思いますが、言葉だけみると合成の比率は少なく、鉱物の比率が多い気がします。
部分鉱物オイルでは無いのですよね。
それも使っているのはグループ1です。配合比率は極秘なのです。

私が部分合成を作るのであれば、グループ2・3を使います。
ただ、グループ2・3もほぼ同じ性能なので、ブレンドする意味があまり無い気がします。
意味があるとすれば、鉱物は10Wまでしか出来ないものをグループ2・3を混ぜることで0W、5Wに出来るぐらいでしょうか。