
エンジンから、そんな音がして──
あなたも、こんなふうに悩んだことはありませんか?
──そうやって、自分で調べて、自己診断して
「スラップ音かな…」「オイルが合ってないのかも」「柔らかい粘度に変えてみようかな…」
と対策して──
それでも音が消えない。
そしてまた、同じ悩みに戻ってくる。
そんな“終わらないループ”に、ハマっていませんか?
実はその音、スラップ音ではなく、プレイグニッションの可能性があります。
しかもその原因は──
「オイルが燃えてできたカーボン(燃えカス)」が、着火源になっていた可能性があります。
メカに詳しい方でも見落としがちな“音の正体”。
誤解したまま放っておくと、エンジンブローに繋がる危険も。
この動画では、元エンジンチューナーの視点から、スラップ音とプレイグニッションの違い、
そして**オイルが引き起こす“燃焼異常の罠”**を徹底的に解説します。
スラップ音って何?

「カランカラン…」「カタカタ…」「カンカン…」
これが、いわゆる**“スラップ音”**と呼ばれるエンジンの打音です。
スラップ音とは──
ピストンが横に揺れて、スカート部分がシリンダー壁に当たることで発生する音。
冷間時やアイドリング直後などに、「金属がぶつかるような音」として現れることがあります。
でも実は、
このスラップ音──
現代の市販エンジンでは、まず起きないように設計されているんです。
✅ なぜなら、今も昔もピストンは「膨張する前提」で作られているから。
・ピストンは熱で膨張することを想定した“楕円形”構造。
・そして、ピストンの横振れ=“首振り”を抑えるために、
「スカート」と呼ばれる部分が設けられている。
このスカートが、ピストンのブレを物理的に受け止めるバリアになっているんですね。
さらにもうひとつ──
ピンの取り付け位置(ピンオフセット)も、スカートの当たりを逃がすようにズラして設計されています。
また、ピンの取り付け位置をわずかにズラす「ピンオフセット」は、
スラップ音を防ぐだけでなく──
爆発の力を効率よくコンロッドへ伝えるための工夫でもあります。
自転車でペダルを踏むとき、真上より少し前の方が力が入りますよね?
それと同じ理屈で、点火タイミングとコンロッド角度の最適化にも役立っているんです。
これらすべてが、スラップ音を出させないための構造的工夫です。
異音の正体は「カーボンデポジット」
エンジンから「カラカラ」「カリカリ」といった音が聞こえたとき、整備士でさえ「スラップ音」と判断することがあります。
しかし実際には、その多くは 燃えたオイルが残したカーボンデポジットが火種となって起こるプレイグニッション(早期着火) です。
この現象は点火プラグの火花を待たずに燃料が勝手に燃え始める異常燃焼であり、ピストンやコンロッドに逆方向の力を与え、最悪の場合はエンジンブローに直結します。
つまり、異音の原因は単なる「スラップ音」ではなく、燃えやすいオイルが燃焼室でカーボンを残し、それが火種になること にあります。
そしてその予防には、ノンポリマー製法による燃えにくく、カーボンを残さないオイル を選ぶことが最も有効です。
なぜカーボンデポジットが異音を生むのか
オイルは必ず燃焼室に入ってしまう
ピストンリングやバルブのすき間から、ごく少量のオイルは燃焼室に侵入します。
通常は問題になりませんが、オイルが燃えた際に残る「スス」や「硬いカーボン片」が燃焼室に蓄積すると、それ自体が赤熱し、火種となります。
プレイグニッションの仕組み
- 点火プラグよりも早くカーボンが燃料に着火
- ピストンがまだ上昇している段階で爆発が起こる
- コンロッドは逆方向の衝撃を受け、ピストン頂部が割れたり穴が開いたりする
- 進行すると「デトネーション」へ悪化し、爆轟によってシリンダーヘッドまで破壊される
スラップ音との誤診
「カチャカチャ」という金属音が似ているため、現場でも誤診されやすい。
点火マップを遅らせても改善せず、オイルを変えると音が消えるため「粘度の違い」と勘違いされる。
しかし実際には「オイル由来のカーボンが一時的に減っただけ」だったケースが多いのです。
スラップ音とプレイグニッションの違い
スラップ音とは
ピストンの横揺れでスカートがシリンダー壁に当たり発生する打音
昔のL型エンジンなどでは冷間時に起こりやすかった
現代のエンジンは素材や設計の進化でほとんど発生しない
プレイグニッションとは

点火プラグに火花が飛ぶ

燃焼が広がる

蓄積したカーボンが火種となり予期せぬ燃焼が発生

燃焼室のプラグの燃焼とカーボンで発火した燃焼が空気を圧縮させると、燃焼圧力が増し異常燃焼として異音が発生。
ノッキングよりも破壊力が大きいのでダメージが蓄積するとエンジンブローになりやすい
デトネーションとの関係
プレイグニッションやノッキングを放置すると、最終的にデトネーションへ悪化
デトネーション=爆轟(衝撃波的燃焼)で、エンジンに致命的ダメージを与えて即エンジンブロー。
デトネーションは破壊力が桁違いに違います。
カーボンを抑えるにはノンポリマー
異音の正体=カーボンデポジットの可能性
エンジン異音の多くは「スラップ音」だと思われがちですが、その正体は燃焼室に蓄積した カーボンデポジット です。
このカーボンはどこから来るのか? それは、オイルそのものが燃えて残った“燃えカス”に他なりません。
- オイルが燃焼室に侵入する
ピストンリングやバルブシールのすき間から、ごく少量のオイルはどうしても燃焼室に流入します。これは新品エンジンでも避けられない自然な現象です。 - 燃焼してカーボンが残る
オイルが燃料と一緒に燃えると、その性質によって「完全燃焼」せず、硬いカーボンやススとなって残ります。 - 赤熱したカーボンが火種になる
残留カーボンは燃焼のたびに熱を受け、やがて赤熱化。これが新しい混合気の“早期点火”を引き起こす火種になります。 - プレイグニッションが発生
ピストンがまだ上昇している最中に着火するため、逆方向の力がかかり、ピストン頂部の破損やコンロッドの曲がりといった重大なダメージへつながります。
つまり、耳にする「カラカラ」「カリカリ」という異音は、実はオイルが燃えて残したカーボンが原因である可能性が高いのです。
予防のカギ=ノンポリマー製法
では、なぜ「ノンポリマー製法」がカーボンの抑制に有効なのか? その理由を整理します。
- ポリマーを使用しないため、高温で分解しにくい
一般的なマルチグレードオイルは、粘度を安定させるためにポリマー(粘度指数向上剤)を配合します。
しかし、このポリマーは分子構造が弱く、高温やせん断で切断・分解しやすい。分解したポリマーは燃焼時に“硬いカーボン片”を残しやすく、これがプレイグニッションの火種になります。 - カーボン発生を最小化できる
ノンポリマー製法のオイルは、粘度調整にポリマーを用いず、ベースオイルそのものの特性で性能を出します。
そのため高温燃焼に巻き込まれても「分解物=カーボン」を残しにくく、燃焼室内での付着物を大幅に減らせます。 - 添加剤過多に頼らず、ベースオイルの耐熱性で勝負する
市販オイルの中には“燃えやすいベースオイル”を補うために大量の清浄分散剤を添加し、カーボンを分散させようとする製品があります。
しかし、これは“根本的な解決”ではなく、「カーボンが出る前提の対処」に過ぎません。
ノンポリマー製法は、そもそもカーボンが発生しにくい基油を選定・精製しており、添加剤依存ではなくオイルそのものの耐熱性・安定性に軸足を置いています。 - 燃えにくく、燃えても硬いカーボンを残さない
ノンポリマー製法のオイルは、燃焼室に流入しても「完全燃焼」に近い形で分解し、硬質の残渣を残しません。
つまり“燃えにくさ”と“燃え残さなさ”を兼ね備え、火種をつくらない。これこそが、プレイグニッション予防に直結するポイントです。
だからこそ──ノンポリマーオイルを選ぶべき理由
- プレイグニッションの火種となるカーボンの発生を根本から抑制できる
- 高温・高負荷の環境でも分解物を残さない
- 長期的に見て、エンジン異音や破損リスクを減らせる
👉 だからこそ「ノンポリマーオイルを選ぶこと」が、愛車にとって最も実効的な防衛策なのです。
ニッションは、似たような金属音を出しますが、原因もタイミングも、そしてエンジンへのダメージもまったく別物。
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